チュニジアへのフェリーは13時出港。ただしフェリー会社から送られてきたメールには、少なくとも3時間前にはフェリー・ターミナルに来ること、とある。そんなわけで、朝起きてホテルのチェックアウトを済ますと、近くのマクドナルドでさくっと朝食をとり、港に向かった。メトロやトラムでも行けるが、歩いたってたいした距離ではない。時間もあるし、せっかくなので町を見ながら行こうということで、1.5 km ほどの道を歩く。フェリー・ターミナルの最寄だというトラムの駅までは来たのだが、肝心のフェリー・ターミナルが見つからない。港というのは、あまり大きな荷物を持ちながら歩き回るのに気持ちのいい場所ではない。当然海辺にあるので町の中心からは外れたさびしいところにあるし、ひとつひとつの建物が大きくて離れているので歩き回るのも大変。さらに、たいていのフェリー港というのは貨物港も兼ねていたりするので、巨大なタンカーやら倉庫に積み上げられたコンテナやら潮風で錆びたクレーンやら排気ガスを吐きつつ行きかう貨物用大型車両やらがあり、ひとりで歩いていると心細くて怖くさえある。そんな状況の中、私はマルセイユの港で迷ってしまった。
荷物もあるし、おとなしくタクシーにしとけばよかった。と後悔しつつ、港湾労働者っぽい屈強な男たちに道を聞きながら歩き回る。ただ当然ながら、彼らは貨物関連の仕事をしていて旅客船のことはあまりよく知らないので、けっきょく良くわからないまま20分ほどさまよう。
そこに通りかかった親子。道を聞いてみると、自分たちもチュニジアに行くのだと言う。親父さんの方は何を言っているのかほとんどわからないが、息子の方が多少英語ができたのでなんとか会話が成立した。親子はリヨンに住んでいるというが、生粋のフランス人の顔ではない。チュニジア人のものとも違う。どちらかというとギリシア人ぽい顔をしている。移民なのかな。なんでもチュニスで親類の結婚式があってしばらく滞在していたのだが、事故にあってしまったので医療設備の整ったフランスにいったん帰ってきて、治療の後またこれからチュニスに戻るんだとか。たしかに息子の顔には痛々しい縫合痕がある。交通事故か何かだろうか。
けっきょく親子もターミナルの場所を知っていたわけではなかったが、なにぶんフランス語がしゃべれるので心強い。人に道を尋ねつつ歩いていく親子にくっついていく。もともと歩いていたところとはだいぶ離れたところで、フェリー・ターミナル発見。ずいぶんと地味な建物で、これは言われないと気づかないだろう。入り口の周りには荷物を山ほど抱えたチュニジア人が入り口が開くのを待っていた。
10時過ぎにターミナルの入り口が開き、中に入る。チケットか確認書を持っていないとターミナルへも入れないようだ。中で、メールで届いた確認書をプリントアウトしたものと実際のチケットを引き換える。乗船開始までここから2時間ほど待ち。あとからパラパラと人がやってくる。別に3時間前に来なくても良かった感じだ。
待合室の片隅からものすごい怒声がしたと思って振り返ると、さっきの親子だ。息子の方に対して港の係員か何かがものすごい血相で怒っている。どうやら息子が係員の体に触れた拍子に私物のサングラスを壊してしまったようだ。その後、野次馬も加えて騒ぎは大きくなり、けっきょく警察沙汰に。親子はどこかに連行されていってしまった。
出港予定時刻1時間前になり出国審査と乗船開始。ターミナルから乗船口につながったタラップから乗り込む。中は意外に豪華な設備だ。バーやレストラン、カフェテリアはもちろん、ナイトクラブやプールまである。ただチュニジア人の乗客は、そんなものには目もくれず、乗り込んだらさっさと床に毛布やらシートやら敷き始めた。床を陣取って寝床にするらしい。出港前からカフェテリアで黙々と腹ごしらえをする人たちも多い。船内を回っていたら、例の親子の姿もあった。ちゃんと釈放されて乗れたんだ。良かった。
出港予定の13時を過ぎたが、一向に動く気配が無い。デッキから眺めると、フェリーに積み込まれる車がまだ長蛇の列をなして待っているし、フェリーに横付けした給油船からは目下燃料の積み込み中のようだ。まだかまだかと待つうち、15時を過ぎてからようやく船が動き出し、マルセイユの港を離れる。
チュニス到着まであと20時間。プールサイドでビールを呑んだり、バーで演奏を聞いたりしながらのんびりすごす。
<本日の1枚: 船尾からの風景>
0 件のコメント:
コメントを投稿