前日の夜に次の目的地ソフィアでの予定を考えた。ソフィア市内には特段めぼしいものも無そうだ。だがソフィアから90 kmほど離れた山奥に、「リラの僧院」というブルガリア正教の聖地があるらしい。山奥にある僧院。秘境感満載だ。これはぜひ訪れたい。ソフィアからリラの僧院には、10:30に街外れのバスターミナルからバスが出ているらしい。ところが困ったことに、昨日シルケジ駅で切符を手に入れた1日1本の夜行列車は、途中線路工事の影響で時間がかかり、12時過ぎにソフィアにつくという。それではバスに間に合わない。かといって大して見るものも無いソフィアに1泊するのももったいない気がする。鉄道ではなくて夜行のバスなら、もっと早く着くやつがあるんじゃないか?
朝起きてホテルをチェックアウトすると、さっそくソフィアへのバスチケットを手に入れられそうなところを探してみる。幸いホテルの近くは観光客の集まる界隈で、昨日いくつか旅行会社があるのを目にしていた。いくつかたずねて歩けば、バスのチケットを手配できるところもあるだろう。
通りを歩いていて小さな看板が目に付いた。「Overseas Travel」、いかにも国際便を扱っていそうな名前。早速入ってみる。中にはいくつかカウンターがあったが、目の前にいたにいちゃんが空いていたので話しかける。「ここって国際バスのチケット取り扱ってますか?」。すると「ここで取り扱ってるのは、ソフィアへのバスだけだよ」。ビンゴ! 運行時刻を聞いてみると、今晩の20:30にイスタンブール郊外のオトガルバスターミナルを出て、ソフィアへは明日の朝6時前には着くという。完璧だ。
とここまで来て、ふと隣のカウンターの会話が耳に入る。「はいじゃあ、こちらは私のほうで手配しておきますねー」。え、日本語? 隣のカウンターを担当しているおねえちゃんが、ほとんどネイティブな日本語で応対をしている。よく見ると、カウンター越しに話をしている客も含め、店内にいた他の客も多くは日本人のようだ。さらに店内を良く見てみると、棚に日本語の本があったり日本語の書かれたポスターが貼ってあったりする。「なにここ。日本人に特化した旅行会社なの?」と目の前の兄ちゃんに聞いてみると、「日本人専門、ってわけじゃないけど行きがかり上そうなってる感じなんだ。この店で日本語しゃべれないのは俺だけ。肩身が狭いよ」と言って笑った。
チケット発券のためにバス運行会社とのやり取りを待っていると、先ほど日本人客を応対していたおねえちゃんがこっちに来て、「これどうぞ。日本の方ですよね?」となぜか日土友好のTシャツをもらってしまった。すると他の客も私が日本人だと気づいたらしく、「あら日本の方ですカー! 旅行、どちらまで? へぇーえ、ポルトガルから日本まで。私もね、5年前に日本からトルコまで陸路でシルクロードを通って旅しましたよ」とか、「今回トルコに来たのはね。ボスフォラス海峡を泳いで渡る大会ってのがあって、それに参加するためなんですよ」とか旅談義が展開される。みんなおじいさん、おばあさんと言っていいくらいの歳だが、日本の高齢者でもそういうアクティブな旅の仕方をする人がいるんだ、と妙に感動する。
バスチケットも無事入手。鉄道の切符の方を払い戻しできないかと考えたが、旅行会社のにいちゃんいわくおそらく難しいだろうとのこと。直接駅にいって聞いてみろといわれたが、可能性が薄いならまたわざわざ駅に行って長い時間窓口で並ぶのも面倒くさい。たいした額でもないのでいいかとあきらめることに。
今日の観光はイスタンブールの新市街を歩く。まず向かったのが海辺のオシャレスポット(?)、オルタキョイ。地下鉄やトラムはそこまで走っていないようだ。ボスフォラス海峡周辺を渡る渡し舟で行けないか? 昨日も来たエミニュムの船着場に行って、片っ端から船に行き先を尋ねるが、どうもオルタキョイ行きの船というのは無いらしい。「あそこだ。あそこからオルタキョイ行き出てる」と言われて喜んで行ってみると、そこはバス乗り場。しょうがないのでバスで行くかとこれまた片っ端から運ちゃんに行き先を尋ねるが、これまたオルタキョイへ直接行くバスは無いんだそうな。けっきょく、トラムで終点まで行き、そこからバスに乗り換えていくことになった。
オルタキョイはそんなに大きくなく、屋台村見ないなものと海に面した公園がある程度だった。でもボスフォラス大橋を間近に臨む景色は気持ちがいい。屋台ではオルタキョイ名物のごてまぜ焼き芋、クンピルを売っている。さっそくひとつ頼んでみると、屋台のおっちゃんは巨大なジャガイモを2つに割り、中身をへらで潰しながらバターと混ぜる。その後、「ソーセージ入れるか? オリーブ入れるか?」と次々トッピングを聞いていく。何をどれだけ乗せても値段は同じ。いちいち答えるのが億劫になって、全部乗せてくれという。タワーのようにトッピングが山盛りになった芋に、おっちゃんは最後ケチャップとマヨネーズをかけて完成。旨い。ちょっといろいろ乗せ過ぎたかな。今度来た時はトッピングやソースをもうちょっと絞ってオーダーしてみよう。
オルタキョイを後にして、タクシムの丘の地下を走る、世界最古の地下鉄と言うやつに乗ってみる。地下鉄と言っても、地下を走るケーブルカーで、1駅しかない。最古とはいえリニューアルがされていて設備は新しかった。その後、トラムに乗り換えて旧市街に戻る。
旧市街でまだ見ていないのはアラビア風の教会アヤソフィアと、ローマ時代の地下貯水池、地下宮殿。どっちかというとアヤソフィアの方が必見ポイントらしいが、今回は地下宮殿を選択。私は何を隠そう「地下マニア」だ。地下室とか地下通路、地下鉄なんかでもちょっとワクワクするし、地底個やら地下のカタコンベやらカッパドキアの地下迷宮やらになるともう代興奮モノだ。旧市街のストリートにある地味な入り口から入ると、そこには入り口から想像もつかない巨大な地下空間が広がっていた。地下マニアの血を満足させるに十分な雰囲気。これはすごい。下のほうに溜まっている水には魚が泳いでいる。巨大な地下空間を支える柱には逆さになったメドゥーサの首の彫刻などがされている。大満足して地下宮殿を出た。
さてバスターミナルに向かう時間にはまだ1時間ちょっと余裕がある。例によって大行列のアヤソフィアに行く時間は残念ながら無い。今晩から3日間、夜行のバスや列車での移動続きでホテルでシャワーを浴びることができないので、せめて今日かいた汗の分だけでも落としてさっぱりしたいところ。よし、あそこに行くか。
やってきたのは昨日と同じハマム。今日はセルフサービスのコースを選択。それでも結構いい金を取る。浴室に向かう最中、昨日の武蔵丸がいた。「おっ、また来たのか。どうだ、俺のサービスは良かったろう?」という顔をしていたので、「ああ来たよ。でも今回はセルフサービスだ」という顔を返す。例のドーム状の蒸し風呂で1時間たっぷり汗をかいた後、体を洗って出た。個室脱衣所の前に、昨日はいなかった少年がいて、飲み物はどうだと聞いてくる。値段を聞いてみると若干市井より高かったが、まあよかろうということで例によりフレッシュオレンジジュースを頼む。風呂上りの一杯はやっぱりうまい。
ホテルで荷物をピックアップし、オトガル・バスステーションに向かう。このバスターミナルはおそらく昨日アテネからのバスで着いた場所の近くに相違ない。タクシーに乗って市内に来るとき、やたら広いバスターミナルを見た。ホテルからはトラムと地下鉄を乗り継いでいく。しかし夕方のラッシュでトラムが超満員の上、トラムから地下鉄への乗換えがやたら遠い。歩道橋やら地下にに下りる階段やら、当然のごとくエスカレーターなど無いので、せっかくハマムで汗を落としたのにまた汗だくになってしまう。
オトガル・バスステーションは思ったとおり昨日のバス発着所のすぐ裏手だった。やたらと広いロータリーにバス会社の事務所が並んでいる。指定されたさんざん探し回った挙句、95番の事務所へ。
バスには問題なく乗れた。乗客は10人ほど。バスはブルガリアの会社の運行で、アテネからイスタンブールへのMetro社のバスと較べると、ちょっと設備がぼろい。Metro社のバスではことあるごとに出されたコーヒーやお茶も、このバスでは最初に一杯出ただけ。しばらく車窓を眺めていたが、だんだん風景が単調になりそのまま寝る。途中、バスが高速のど真ん中で停車、何打なんだと思っていると、道端の茂みから人が現れてバスに乗り込んできた。ここはバス停だったのか、それとも運転手の友達をこっそり乗せているのか?
また例によって夜中に起こされる。パスポートコントロールだ。まずはトルコからの出国審査、これは問題なくパス。次にブルガリアの入国審査、審査官にパスポートを差し出したところ、「あんたちょっと待ってろ」と言われ、別の英語をしゃべる審査官が来た。どうやらEU圏に出たり入ったりしてスタンプがたくさん押されていたことが興味を引いたらしい。これまでの旅程を事細かに詰問される。しまいにはパスポートにはさんでいた鉄道やフェリーの切符の半券まで1枚1枚調べだし、パスポートのスタンプの出入国日と照合しだす。他のバスの乗客を待たせること30分ほどでようやく放免。車中に戻るとみんなに拍手で迎えられた。遅れを取り戻すべく、バスはブルガリアの道をすっ飛ばして一路ソフィアへ。
<本日の1枚: オルタキョイから見たボスフォラス海峡>
0 件のコメント:
コメントを投稿