朝早く起きてモスタルの駅の隣にあるバスターミナルへ行く。今日ドゥブロブニクへ移動するバスのチケットを買うため。別に出発時刻近くになって買ったっていいんだが、やはり次の交通手段の切符が手元にあるというのは安心する。バスは一日3本出ているらしい。1本目は10時、2本目は12時半。夕方までにはドゥブロブニクに入りたかったけれど、10時のだとさすがに早すぎてモスタルを回る時間が取れないので、12時半の切符を入手。これで半日はモスタルを回れる。
ホテルに戻り朝食。各種ハムや卵料理、フルーツなど盛りだくさんのバフェ形式。いつもはホテルに朝食が付いていても寝てたり早くから外に出てたりでスキップしてしまうことが多いのだけれど、今回はホテルで食べることにして良かった。いろんな種類の珍しいチーズを食べ較べていると、ホテルのおねえさんがドゥブロブニクへのバスの時刻を書いたメモ用紙を持ってきてくれた。昨日のおばちゃんがバスの時刻を調べて知らせるよう手を回してくれたんだ。もう用は済んでしまったがありがたく気持ちを頂戴する。
モスタルの町は小さい。早足で歩き回れば半日でも十分回れる。まずはモスタルの名前の由来にもなっている文化遺産スタリ・モスト(「古い橋」の意味)へ。モスタルの町もボスニア紛争の被害を免れなかった。セルビア人、クロアチア人、ムスリム人の三つ巴の争いのうち、この町は主にクロアチア人とムスリム人の間での戦闘で破壊された。スタリ・モストも例外ではなく、砲撃を受けて崩壊、いま旧市街に架かっている橋は2004年にユネスコの支援の下再建されたもの。旧市街の街並みとスタリ・モストは古の面影を漂わせているとはいえ、やはり再建されたことを示唆する不自然な新しさは目に付いた。モスタルとは元々「橋の守り人」という意味。400年以上に渡って守られ続けてきた橋は街とともにあっという間に破壊された。いったん壊された物は、似たような物を復元できても、本物は二度と戻らない。
リラの僧院で出会った旅行者氏に聞いていた情報、「スタリ・モストをちょっと離れると紛争の痕跡がもろに残っている」。旧市街を離れて町を貫く道路に足を向ける。あった。道路に面した建物が軒並み銃痕だらけ。枠組みを残して完全に崩壊している建物も多い。紛争から15年以上経っても、容赦ない現実はまだ残っている。
ホテルから荷物をピックアップし、バス・ターミナルへ。観光シーズン真っ盛りの今、バルカン半島屈指の人気リゾートであるドゥブロブニクへのバスはさぞかし混むかと思いきや、乗客は定員の半分ほど。2時間半ほどの道のりを走る。
ベオグラード-サラエヴォ間の列車と同様、このバスもクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナを出たり入ったりしながら目的地へ向かう。まず道中いったんクロアチアに入国、ボスニアの出国と併せてパスポート・コントロール。パスポートは見られるだけでスタンプも押されない。しばらくするとバスは景色の良いアドリア海に出て、海沿いを走る。またしばらく走ると、今度は再度ボスニア・ヘルツェゴビナに入国。アドリア海の海岸線にはわずか10km足らずだが、ボスニアが海までせり出しているのだ。そして間もなく、もう一度クロアチアに入国し、ドゥブロブニクに着く。鉄道やバスのルートと国境線が複雑に入り組んでいるためこういう事態が起こる。ここらへんにも、もともとひとつの国の国内を走っていた鉄道や道路の上に後から国境線が引かれた複雑な事情をうかがい知ることができる。
ドゥブロブニクのバス・ターミナルは新市街の港沿いにある。次の目的地ザグレブまでのバスの時刻を確認してから、タクシーでホテルへ。荷物を置き、ホテルの前から出る路線バスに乗って城壁に囲まれた「アドリア海の真珠」ドゥブロブニク旧市街を見に行く。旧市街は噂どおりの綺麗な町だった。ただしここもモスタル同様、ちょっと不自然な新しさを感じる。この美しい町も、クロアチア独立戦争の際にやはり砲撃を受けて破壊されたのだ。旧市街のところどころに残る破壊されずに残った建物と、戦禍を経て復元された建物とのギャップはやはり見て判る。
日が沈む前にと、早足で旧市街を抜け、戦災による運休から昨年復活したばかりのゴンドラに乗りスルジ山に登る。ドゥブロブニクの旧市街、新市街と沖合いに浮かぶロクルム島が一望できる絶景ポイント。帰りは自分の足で山から下りようとしたが、ガイドブックに載っている登山道は閉鎖されていた。
夕食は旧市街に戻り海の見えるレストランへ。観光客の多い街だけあって、他の旧ユーゴの町と較べると圧倒的に物価が高い。それでも、アドリア海の新鮮な海鮮モノを使ったピザとリゾットは最高に旨かった。どちらも調理の仕方はイタリアの物と較べても遜色ない。素材がいい分こちらの方が断然おいしい。もはやイタリア料理はイタリアで喰うべきものにあらず、か!?
食事のあとは、夜の旧市街を散策してからバスでホテルに戻る。
<本日の1枚: スターリ・モスト>
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