ザグレブ着は朝7時の予定だったが、20分くらい遅れての到着となった。ソフィアからブカレストへの列車での7時間遅れをはじめとして、数時間単位の遅れをくさるほど経験した身としては、20分なんてほぼ定時みたいな感覚だが、今日は7:40のバスに乗らなければいけないのでちょっとだけ焦る。ザグレブのバスターミナルは結構大きく、3階建てになっている。まずは大きな荷物を預けるべく荷物預かり所を探す。2階にあるロビーの中をピクトグラムで示された方向に歩いてもどうも見つからないと思ったら、階段を下りた乗り場の横に地味にあった。料金は時間制。結構いい値段をとる。次はチケット。こちらは2階のチケット窓口ですんなり買えた。とはいえすでに発車5分前、ぎりぎり。
プリトヴィツェ行きのバスの最終到着地はドゥブロブニク。今さっき来たばかりの道を引き返す。ザグレブに来るバスではプリトヴィツェを通る時間には寝ていたので、車窓から見る景色ははじめてのもの。プリトヴィツェのバス停で途中下車しなければいけないので、一応車掌にプリトヴィツェに着いたら教えてと言ってみるが、車掌氏は英語が分からない様子。「プリトヴィツェ? Ok, Ok!」と言ってはいるが、本当に通じているんだろうか? もしかしたら単に「プリトヴィツェを通るよ」って意味でOKって言っているだけかも。
ザグレブを出て2時間ほど、バスは山道の中に入って行き、車窓の景色も渓谷や川沿いの村が多くなってきた。これだけでも結構な眺め。プリトヴィツェへの期待が高まる。ところが、しばらくすると道は川を離れて平原のようなところを走るようになってしまった。川の気配が薄くなるにつれ心配になってきた。プリトヴィツェはほんとにまだ先なんだろうか? もしかしたらもう過ぎてしまったのかもしれない…。不安な時間を15分ほど過ごした頃、窓から「プリトヴィツェ湖 20 km」と書かれた道案内標識が見えた。よかった、まだ通り過ぎていなかった。
プリトヴィツェに着いたときは、ちゃんと車掌がアナウンスをしてくれた。旅行者らしき人が7, 8人降りる。なんだ、他にもプリトヴィツェで降りる人がいたんだ。プリトヴィツェには2つバス停がある。自分以外の旅行者は1つ目で降りたが、地図を見る限り2つ目のバス停から散策をスタートさせた方がよさそうだったので、自分だけは2つ目で降りる。
プリトヴィツェ国立公園は自然を残しながらも観光地としてけっこう整備が進んでいるらしく、公園入り口の前にはクラブハウスみたいな建物があり、レストランや綺麗なトイレが入っていた。それではと、散策前に腹ごしらえをすべく、カフェテリア形式の食堂でニジマスのグリルを注文。焼けたら席に届けてやると言われ、しばらく待つとバターで焼いた魚がやってきた。塩焼きみたいなものを創造していたけど、どちらかというとムニエルっぽい感じ。まあこれはこれで旨い。魚自体は、ブルガリアのリラの渓谷で食べたものの方がデカくて新鮮でよかったかな。
プリトヴィツェにはいくつかのお勧め散策コースというのが設定されている。訪問者は自分の体力や時間と相談してコースを決めればよい。プリトヴィツェを奨めてくれた旅行者氏が「Hコースがいいですよー」というので、素直にそうする。コースの一部に園内を走るエコバスや湖上船を使って国立公園内を一周するコース。所要時間は4~6時間。国立公園への入場料と乗り物の料金を含んだチケットを買い、バスを待つ。観光シーズンだけあって、人がえらい多い。20分間核で走るバスも、下手をすると満席になりそうだ。運よく1つ目のバスで席を確保でき、散策のスタート地点へ。
散策道は川と湖、そして滝に沿って歩くようにできている。途中、尾瀬のような感じで湖や池の浅瀬を歩くようなところも多い。水は深いエメラルド色で、空気も旨い。歩くだけでかなり気持ちがいい。
透き通った水の中には魚もいっぱい。ニジマスが群れを成して泳いでいる。これが捕まえらrてさっきのレストランでグリルになって出てくるわけだな。君たちの仲間はおいしかったよ。
途中昼食をはさみつつ5時間くらいかけて国立公園の端まで来て、入口まで戻る園内バスの乗り場にたどり着いた。ところがそこには気持ち悪いくらいのバス待ちの人の群れ。こんな中で待つのは嫌だ。次の便に乗れるかも分からない。ということで入口まで3km弱の道のりを歩いて入口に戻り、ザグレブへ戻る長距離バスが着くバス停でバスを待つ。バス停のあたりをぶらぶらしている係員らしきおっさんに次のバスの時刻を聞くと、「ンフ、ンフ」と言いながら紙に4:15という数字を書いて見せてくれた。あと45分くらいか。1日のバスの本数を考えれば、ちょうど良い時間に戻ってきた。
ザグレブへのバスは来るときに使ったものとは違う会社のものだったようで、バスターミナルではなくザグレブの中央駅前に着いた。今日の宿泊地、スロヴェニアのリュブリャーナへの列車にはまだだいぶ時間があったので、市内の居酒屋風レストランでスニッツェルを食べつつ一杯。1日歩き疲れた体にビールが染み渡る。そのままほろ酔い気分でバスターミナルまでの道を2.5 kmほど歩く。今日はかなり歩き通しだ。トータル20 km以上歩いているんじゃないだろうか? バスターミナルまでの道沿いの壁に描かれた落書きが結構面白い。
バスターミナルで荷物をピックアップし、今度はタクシーで中央駅に戻る。ザグレブ発21:15のミュンヘン行きに乗車。2等車のコンパートメントは旅行者で一杯。ドイツやらクロアチアやらイギリスやらの人たちとぼちぼち話していると列車はすぐに国境駅に着いた。クロアチアの出国審査はさくっと通ったものの、スロヴェニアに入国してからの審査で係官の目が光った。どうもEU圏に何度も出たり入ったりしているスタンプの多さが引っかかったらしい。ブルガリアに入国するときと同じ状況。パスポートのほかに写真つきのIDを持っていないか求められ、さらにメモ用紙に自筆のサインをさせられて筆跡照合。15分くらいかかってやっと無罪放免となった。同じコンパートメントの人に「あんたのおかげで一眠りする時間ができたよ」と言われる。列車を遅らせてしまったようだ。
リュブリャーナは小雨が降っていた。ホテルまで15分ほど歩き、チェックイン。もう0時を回っている。明日の朝にはオーストリアのザルツブルクに発つので、せめてリュブリャーナのシンボル、三本橋だけは見ておこうと、疲れた体を引きずって市内中心部まで歩く。三本橋、たしかに綺麗だけど他のヨーロッパの街にもいくらでもありそうなシロモノだ。一国の首都として他に見所が無いから無理やり有名にされている感は否めない。スロヴェニアという国、かつてはユーゴスラビアの中で西欧に最も近く窓のような役割を果たしていたという。ユーゴが解体された今、この国はユーロを導入するなど、一気に西欧の仲間入りをしようと躍起になっているように見える。だがそれは本当に正しい方向性なのか? スロヴェニアはユーゴという枠組みの中にあったからこそ西欧への窓口としてのキー・ポジションをキープしていたのであって、そこを離れて西欧の中に入ってしまったら単に他の西欧諸国から見劣りする1つの国でしかなくなってしまう。それがスロヴェニアの選択なら仕方が無いけど、なんとももったいないような気がした。
今日でバルカン半島を回る旅は終わり、明日からはかつて東欧諸国と呼ばれ、芸術と自然にあふれた北部中欧へ。
<本日の1枚: プリトヴィツェ湖国立公園>
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